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山形家庭裁判所酒田支部 昭和41年(少)2543号 決定 1966年12月23日

少年 T・H(昭二四・八・二二生)

主文

本件について審判を開始しない。(非行なし)

理由

本件送致事実は、少年は、昭和四一年九月○日午後一〇時頃、酒田市大字○○・市立病院○○分院前路上において、自動二輪車(二種原付)を無免許運転した、というにある。

家庭裁判所調査官山田滋が調査した結果、右違反を犯したのは少年でなくG・M(当一六歳)であり、同人が右違反を犯して警察官に発見され身許を問われた際に罪を免れる目的のもとに友人たる本件少年の氏名、生年月日、本籍、住所等を詐称したものであることが判明した。そこで当裁判所はG・Mについて審判を開始し右事実を確かめたうえ保護処分に付した。

ところで、本件送致の実質をみると、司法警察員が違反を現認して送検し、当裁判所に送致されて来た者は、T・Hの氏名を詐称したG・Mに外ならないから、本件の調査審判の対象たるべき者はT・HことG・Mであつて本件少年たるT・Hではないはずである。従つて、氏名訂正の方法によつて処理するのが原則であるけれども(最高刑裁資六七号一九五頁)、本件のように、用いられた偽名が実在人であつて、生年月日、本籍、住所に至るまでその実在人のものと同一である場合には、例外的に、調査審判の対象は被詐称者であるとすべきである。

そうすると、本件少年は本件違反を犯していないものであるから審判に付することができないので、少年法一九条一項により主文のとおり決定する。

(裁判官 斎藤清実)

参考

1 刑事裁判資料 六七号一九五頁

検察官会同における質疑回答

問 身柄不拘束の被告人について偽住所、偽名が用いられていた場合には、これを変更することは差しつかえないか。

答 裁判所に対し、適当な方法で、変更の旨通知すればよい。

2 詐称者(G・M 昭二五・三・二四生)に対する取扱い

昭和四一年一二月一六日 調査官事件報告立件

昭和四一年一二月二一日 保護観察決定

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